自助サークル紹介「あるがまま」
- 執筆者
- 高尾晋
【注意】この記事は2002年12月段階のものです。現在は北海道札幌市で月に1回開催。第2か第4土曜日の夜0時前後まで。(クラヴェリナ編集部)
ひきこもりや対人関係が苦手な人たちの集まり「あるがまま」を始めて、2年半が過ぎた。当初は僕を含めて3人程度で始めた集まりだったが、多いときには20人以上も集まる時期もあった。最近は常連さんが調子を崩したりと、10人前後に落ち着いている。会場は僕が運営委員を務める障害者の共同作業所。札幌駅から歩いて15分程度の便利な場所だ。もともとはイタリアンレストランだったので、室内は喫茶店やバーといった感じ。20人が入ればいっぱいというこじんまりとしたスペースに、テーブルやいすが雑然と置かれ、薄暗い照明が照らす。決してきれいとはいえないが、こうした雰囲気が「落ち着く」という人が多い。
毎月第二、第四土曜日、僕は午後7時ごろに鍵を開け、来る人を待つ。「きょうは誰が来るかな」。そう考えているうちに、人が現れる。初めての人には「あるがままノート」を「もしよければ、一言書いてね」と手渡す。「ノート」は初めての参加者に自己紹介などを書いてもらう。いきなり人前で声を出しての自己紹介だと緊張するだろうかと、ノートを用意しているのだ。「高校を半年で中退、以後5年間ひきこきもる…」一番目には僕の自己紹介が書かれている。それ以後、数えてみたら80人近くの人の名前が書かれている。この「ノート」を見れば、どんな人が来ているのか分かる。初参加者は、しばらく眺めてから、書き始める。
参加者は20代や30代が中心で、たまに10代、40代の人も顔を出す。比較的、男性が多いものの、女性が半数を占める日もある。いわゆる「社会的ひきこもり」の人だけでなく、いろいろな悩みを持った人がやってくる。うつ、アルコール依存、アダルトチルドレン、トランスジェンダー、知的障害、統合失調症…。基本的には誰でも受け入れる。差別や区別をするのがいやなので。来る者は拒まず、去るものは追わずが「あるがまま」の基本精神。社会にはいろんな人がいる。自分を認めてもらいたければ、他人も認めなければならない。それを身をもって知る場所でもあるのだ。
集まりには特に決まりごとはなく、好き勝手に来て、好き勝手に帰る。無理にしゃべる必要もない。ただいるだけでいい。酒を飲むのも自由だから、飲みたい人は飲む。自己責任の原則で。ただ、酒で問題が起きることもある。乱闘騒ぎもあったし、トイレにひきこもって、何時間も篭城した人もいた。そうした問題が起こると、メンバーから禁酒にすべきという声がでる。でも、いまだに禁酒にはしていない。僕は、自分の体験上、酒を飲む練習の場も必要だと考えているから。僕が初めての酒を席は、大学入学して間もないクラスのコンパ。23歳の時だ。5歳年下の同級生のほうが、酒の経験は豊富。年上なので、飲めると思われて、ビールをすすめられ、顔が真っ赤になり恥ずかしい思いをしたことがあるのだ。
時間は制限を設けていないので、遅いときには午前2時ごろになるときもある。僕もそうだが、ひきこもり系の人たちは人とはすぐには打ち解けられない。とにかく時間がかかる。2,3時間では足りない。ゆったりとした時の流れの中で、少しずつ心が開けてくる。仕事やアルバイト、学校、病院のことなど、いろんな話題が出るけど、やはり一番盛り上がるのは恋愛かな。先日は初参加者の女性から「病気の人同士が付き合うのって難しいですか?」といきなり聞かれた。それぞれが自分の経験や身近なカップルの例を持ち寄って、彼女にアドバイスした。そして、次は音楽の話に。「イエモンが好きなの」「えっ!私も」…。
このように「あるがまま」に時は過ぎて行く。僕は出会い、交流の場所を設定しているだけ。会報もないし、ホームページもない。ただ、僕の携帯番号やメールアドレスは、原則公開している。道立や札幌市の精神保健福祉センターに問い合わせたら、「あるがまま」を紹介してもらえる。そして、マスコミの取材も積極的に応じる。それは、今現在、ひきこもっている人たちに「あるがまま」の存在を知ってもらいたいからだ。「今は行けないけれども、いつか出られるようになったら、あそこに行こう」。そう思ってくれる人が必ずいるはず。そんな思いが始めた時から常に頭にある。だから、いつまで続けられるか分からないが、たとえ僕一人だけになっても続けるつもりでいる。なにより僕にとっても仲間と出会える大切な場所であるから。

